綺麗だと思えたものはすべてがぼやけて、あるいはぶれて見えた。 ほんの一瞬でも綺麗だと思うとそうなってしまうようになった。いつのころからかそうなっていたので思い出そうとしても思い出せない。 これは風景や物に限らず、人に対しても反応する。 僕の目にはくすぶった世界が広がっている。どこまでも綺麗なものとは無縁な世界。 そんな僕でも異性を好きになることはある。ただし、一瞬でも綺麗だと思えば、まばたきをした次の瞬間にはもうぶれているが。 初めて好きになった女性の顔は、もう思い出せない。記憶なんていうものは大概があいまいなものの塊だと思う。 それから僕は普段からなるべく人の顔を見ないようにした。特に女性の顔は見ないようにした。もし不意に好意的な感情が芽生えてしまったりしたら、そしてその人の顔が見えなくなってしまうことがあったら。そう思うと、苦しかった。 だけれども、僕はとなりに座っている彼女の顔は見た。瞬きをせずに覚えた。 今でも彼女の顔はぼやけ、ぶれてしまっているけれど、僕の中の彼女の’つくり’は10年前から変わっていない。 #HOLGA135
by mottohikariwo
| 2009-01-24 22:12
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