7時19分による文章の類
by 7時19分
都会の空と明るい木々
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 イルミネーションにみとれてぼうっと上を見上げていたら正面から歩いてくるおばさんにぶつかりそうになった。敵意むき出しの表情をしている、それもびっくりしたおばさんの顔をみたら妙に物悲しくなった。

 もしかして、もったいないことしたかなあと思う。それはさっきまでのいろんな出来事を加味した上での判断だ。

 さっきまで、近くのイタリアンレストランで夕食をとっていた。僕にとっては顔なじみの、こじんまりとした、だけど味は格別のイタリアンレストランで。僕は食後にコカ・コーラを飲んでいた。

「ねえ、コカ・コーラのコカって何のことかわかる」


 さほど忙しくない店内。厨房からひょっこり顔を出した髭面のシェフが僕に聞いてくる。
 さあ?
 僕の答えに対して、得意げにシェフは答えた。
 コカインのコカだよ。
 そっかあ、コカインねえ。
 僕はそのコカインの入っていないコカ・コーラを啜りながら、手持ち無沙汰のシェフの世間話に付き合った。コカインなんて縁の無い物質に、僕の脳みそはヤられていた。すこしずつ洗脳されていく僕の脳みそ。その物質に惹かれているのではなく、その言葉に惹かれていた。ような気がする。

 言葉を言葉として認識するんじゃなくて、言葉として体感するのよ。昔付き合っていた図書館司書の言葉がふわりと浮かんだ。本を読むって難しいんだねと、僕は答えたような気がする。それは違うんじゃないかと今の僕は思っている。

 夕食後、すぐそばのスーパーに寄る。特に買うものがあるわけでもなかったが、なんとなくふらふらと入ってしまった。店内は閑散としていて、BGMだけが昼間からずっとペースを崩さずに続いているみたいだった。僕はOLを見かける。あきらかなOLだった。誰が見てもそう思うだろうというOLだ。そのOLは誰かに誘われるのを待っているような雰囲気を放っていた。眼、表情、仕草、そのどれをとっても誘われるのを待っているようにみえた。これは予想ではなく、体感だと僕は思った。でも、僕は彼女を誘わなかった。体感してしまったら残るのは空しさだ。僕は直感的にそう思う。そしてその空しさを引き連れて僕は外に出た。

 僕は飽きもせずに見上げていた。イルミネーションがなくても日付さえあればその季節はわかる。だけどイルミネーションはなくならない。体感させるものだからだ。だからなんだろうな。イルミネーションを見ているとなんだか空っぽな気持ちになるのは。僕はまだ、上のほうを見上げている。




#W41CA
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by mottohikariwo | 2009-02-08 22:02
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