7時19分による文章の類
by 7時19分
雨蛙
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 両親が別れたのは、もう随分と昔の話だったような気がした。彼がまだ小さい時の話だ。父親の行方が分からなくなったのは彼がもう少し大きくなってから。

 なんとか面影を思い出そうとしてみても、波立つ水面に映る自分の顔のようで、はっきりとした輪郭さえわからない。

 人づてに父親の事を聞いたのはもう少し大きくなってから。どうやら車に轢かれてこの世を去ったらしい。もう父に会うことも叶わない。

 会いたいと思っても会えない虚しさが、さざ波のように彼の心を揺らした。

 先ほど降り出した雨が、ぽつり、ぽつりと彼を濡らしていく。夏の終わりも少し過ぎた、冷たい雨。

 彼は泣いた。隣に寝そべる妻にばれないように静かに泣いた。

 静かな田舎町の田園。畦道の蛙は涙を流しながら、緩やかに流れる川の淀みに飛び込んだ。


#digital harinezumi2+++
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by mottohikariwo | 2011-11-13 12:41
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